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第11回 山本彩子さんをお迎えして

 12月になって寒い日が続きました。前日は天気が悪く寒さも厳しかったのですが、15日には回復しました。それでも寒かったですが。

 今回の「はまぎくカフェ」は、声楽家の山本彩子さんに来て頂いて、クリスマス・ミニコンサートを開きました。後半では歌唱指導もあり、『キャッツ』の「メモリー」を一緒に歌いました。でも、やはり、彩子さんの独唱は素晴らしかった。話をするときの声は、とても可愛らしいのですが、歌声は鍛えられた声の持つ魅力を堪能させてくれます。人間の声がここまでつややかに膨らみをもって表現力を獲得することに、感動してしまいます。第2部の歌唱指導の発声練習で「この道」をまず一緒に歌いましたが、最後に彩子さんが独唱してくれた「この道」には聞き惚れてしまい、司会進行を忘れていました。

 ピアノ伴奏は忠和子さんです。アンコールのときに、クリスマス曲のミニメドレーを弾いてくれました。お二人とも素敵なドレスで、色合わせも見事に決まっていました(バッチリでした)。

 彩子さんのトークも楽しく、あっという間の1時間半でした。まず第1部は、『マイフェアレディ』の「踊り明かそう」で始まりました。『マイフェアレディ』と言うとオードリー・ヘプバーンを思い出します。この曲の原題“I Could Have Danced All Night” は「夜通し踊ることも出来たのに」という意味です。苦手な仮定法過去完了だ、と一瞬思いました 。でも、歌自体は素敵で、オードリー・ヘプバーンを思い出す楽しい歌です。「優雅な月よ」(ベッリーニ)、「騒がしい舞踏会で」(チャイコフスキー)と続き、次にロシア民謡の「カチューシャ」。この歌にはなじみがありますが、こんなに伸びやかな歌だったんだ、と思いながら聞いていました。オペラ『サムソンとデリラ』より「あなたの声に私の心はひらかれて」(サン=サーンス)、ミュージカル『キャッツ』より「メモリー」で、第1部は終了。

 ポピュラーな曲とクラシックな曲との組み合わせ方が上手だと思いました。ちょっと難解な曲も、彩子さんの歌声で心地よく聴いてしまいますが、知っている曲が出てくるとやはり嬉しいです。

 休憩を挟んで、シルバーリハビリ体操で軽く身体を動かしてから、第2部の歌唱指導が始まりました。第2部では、母音法の指導もあり、みんな必死に付いて行きました。例えば「ありがとうございます」は「あいあおうおあいあう」になります。自分の名前を母音法でやってみるといいと言うので、やってみました。私は「いあういいあお」になります。参加者の皆さんも、笑いながら、一生懸命に発声練習をしていました。そして「この道」を一緒に歌った後、「メモリー」を一緒に歌いました。

 『更級日記』「足柄山」の部分に、歌を歌う遊女が出てきます。「声すべて似るものなく、空にすみのぼりてめでたく歌をうたう」とあります。歌を聴いていた人たちがみんなひどく感動した、という場面です。歌声が空にすみのぼる、という捉え方や歌に心を揺さぶられるというのがどういうことか、この部分はずっと気になっていました。でも、彩子さんの歌声を聴いていると、声に心を揺さぶられるというのがどういうことか、分かった気がしました。

 参加していた方たちも、声の芸術を堪能されていた気がしました。クラシックで訓練された生の歌声には、人の心をつかむ力があることを実感しています。

 参加者の皆さんが帰られた後、山本彩子さん、忠和子さんと、手伝ってくださった方や堀川保育園の先生、私たちスタッフで、ほっとした笑顔の記念撮影になりました。来年もまた、山本彩子さんの歌と忠和子さんのピアノが聴ける機会が持てますよう、一同心から願っています。勿論、参加してくださった皆さんも期待されていることでしょう。堀川保育園の皆さんには大変お世話になりました。本当にありがとうございました。