五行説について

 漢方は中国から伝わり、日本で発展してきた日本の伝統医学です。漢方という名前が定着したのは江戸時代の後期あたりだそうです。オランダ系医学が「蘭方」と言われたのに対して「漢方」の名前が使われるようになり、明治以降は西洋医学に対して、中国医学を土台にした日本の医学を「漢方」と呼んでいます。

 「木火土金水」という名前と、その関係図は見たことのある方も多いと思います。これは自然界の代表的な「木」「火」「土」「金」「水」の五つを使って物事の性質を分類する考え方です。西洋哲学でも特にソクラテス以前の自然哲学の時代には、万物の根源(アルケー)を「水」(タレス)であるとか、「火」(ヘラクレイトス)であるとか、「火・空気・水・土」(エンペドクレス)である、とかの議論が盛んにされていました。洋の東西を問わず、同じような語彙で発想しています。

 漢方の考え方に戻って言うと、五行を身体に応用して身体を「五臓」に分類しています。木は「肝」、火は「心」、土は「脾」(消化器。胃に代表される)、金は「肺」、水は「腎」です。これらは助け合う関係(相生)と抑える関係(相克)でバランスがとられます。相克関係では「木克土」がよく知られています。これは木は土を押さえる、ということで木が土砂崩れを防ぐ、あるいは木は土に根を張って土の養分を吸収することを言っています。

 肝臓の悪い人は青筋が立つとか、心臓の悪い人は赤ら顔になる、胃の悪い人は甘いものが好き、肺の悪い人は血の気が薄くて蒼白、腎臓が悪い人は顔色がどす黒いなど、顔色や好みでその人の体質が分かります。未病の状態でも漢方薬が処方されるという考え方と言えます。クチナシを使ってかつては産着を染めていたのは、抗炎症作用で新生児肝炎を防ぐためだったそうです。未発達の肝を保護してアトピーなどに成り難いようにしていた。その他にも、藍染めは藍の抗菌作用であまり洗濯しないでも臭わないとか、沖縄でゴーヤを食べるのは苦いものによる心臓保護だとか、自然界の中にあるもので身体のバランスをとる民間の生活の知恵が沢山ありました。


五行説とは

漢方の基本となる考え方に「五行説」があります。これは万物を木・火・土・金・水の5つの要素に分類し、それらの関係を説いた理論です。この5つは、お互いに支配したりされたりして絶妙のバランスを保っています。その中でも代表的な関係が「相生(そうせい)」と「相克(そうこく)」です。

 

相生とは

「相生」とは相手を生み育てる母子関係で、五行では木→火→土→金→水という流れを持ちます。木が燃えて火がおき、火からできる灰が土を肥やし、土から鉱物(金)が生まれ、鉱脈から水が湧き出て、その水は木を育てるという具合です。

相克とは

一方、「相克」とは相を抑制する関係です。それは、「相生」の流れにおいて一つ飛ばした木→土→水→火→金という順に関係しています。木は土から養分を吸収し、土は土手として水の氾濫を抑え、水は火を消し、火は金を溶かし、金属でできた刃物は木を切り倒すという具合です。

 

働きの弱まったものは相生関係で励まし、強すぎるものは相克関係でなだめてコントロールしています。木を例にとりますと、水に励まされながら火を鼓舞し、金にけん制されながら土を干渉しています。このように、強すぎることも弱すぎることもなく、他の4つも同様にして五行のバランスは保たれています。

 

      出典:https://www.kotaro.co.jp/kampo/kiso/kampo_gogyo.html