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第13回 すごろくトーキング

 体操のあと、『パプリカ』の振り付けを身体全体を使ったものと「頭の凝り」をほぐすものと二種類やりました。確かに肩の凝りは、気が付きますが、頭の凝りには気づきません。「人にやってもらったら気持ちいいだろうなぁ」という感想には、「そうだけど、結構お値段が張る」との応答がありました。なんでもそうですね。マッサージは気持ちいいですが、それなりにお金がかかります。その割に、すぐ戻ってしまいます。自分で頭のマッサージも習慣になるといいのですが。

 「みどりのそよかぜ」は気持ちよく歌いました。平易な言葉で、さわやかな情景が浮かび上がってきます。でも、「みどりのそよかぜ」という言葉、どんな風?と言われると、うーんです。新緑を吹き抜ける風のイメージでしょうか。1948年1月にNHKラジオで発表されたそうです。戦後の解放感を表す歌だなぁと思います。今回は2番まででしたが、3番に野球をする情景が歌われています。「ストライク」「セーフ」という言葉が使われていて、のびのびと野球を楽しむ姿が目に浮かびます。

 いよいよスゴロクの始まりです。このスゴロクシートは、スタッフで手書きしました。原案は正保晴彦著『心を育てるグループワーク』(金子書房)の中に紹介されている「スゴロク・トーキング」です。

 最初は拡大コピーを貼り合わせて、と言っていたのですが、内容を検討し始めると、もともとの内容では不具合が出て来て、結局、内容を大幅に改定。その結果、手書きした方が早いということで、右のようなシートが出来上がりました。作り始めると、みんな夢中になってやっていました。質問事項を検討するのも面白かったです。

 実際にやってみたら、カエルがもう少し少なくてもよかったことが分かりました。「いつか行きたいところ」はもう別にないわ、という反応もありました。確かに、この質問は若い子向けかなぁ。「人からほめられたこと」は思いつかないという人と、小さい頃からずっと褒められてきた(褒め上手な方です)という回答とに分かれたようです。終わってみて、内容を検討するとまた違った側面が見えてきました。

 ゲームは、くじ引きで席を決め、4つのグループに分かれてしました。30分で終わりにして、その後振り返りタイムを設ける予定でした。でも30分ではなかなかコマが進まず、結局40分ゲームをしました。

 どのグループも最初の辺りで、皆さんのコマが止まったまま、話が盛り上がっていました。一つはカエルの部分で、後戻りすることが多かったことが原因のようです。それと、最初の辺りは、思い出を語る部分が多く、サイコロを振って話をする人に、他のメンバーが次々質問したり自分の話をかぶせたり、と。まぁ、これでは進みませんね。

 スタッフ同士でシートの質問内容を考えていた時、未来志向の話は後にくっ付けました。質問順としてはそうなると思います。早く上がる人が出てくる予想は見事に外れ、私たちが知りたかった「はまぎくカフェの良かった企画」とか、「ひたちなか市に望むこと」などまで到達することなく終わりました。でも、話の内容はそれぞれに面白かったようです。

 お墓の値段の話で盛り上がっていたグループもありました。一番の恐怖体験で、小学生の時に頭虱退治でDDTを頭から振りかけられた話には、ドキュメンタリー映像を思い出しました。防空壕に入った話が出ていたグループもありました。確かに、思い出話は、年齢が上がると豊富になります。

 そういう振り返りもスゴロクシートあるから出来るんですよね、という評価には納得します。人生経験が豊かであることは、話題の引き出しが一杯あるということ。ただ、さあそれを話しましょう、と振っても、何かの仕掛けがないと「身体のどこが痛い」的な話になってしまう。今、一番気になっていることではあるでしょうから。

 あるグループで「ささやかな楽しみ」というマスで、「朝の太陽の光を浴びながら、洗濯物を干すこと」という発言がありました。グループの他の方たちから「素敵ですね」という言葉が漏れていました。

 カフェで集まっても、なかなかお互いを知り合えない、ということから始まった今回の企画。まだまだ、互いの名前を知り合って、というところまではいきません。畑山先生の認知症のお話のとき、おしゃべりの認知症予防効果が言われていました。そして、おしゃべりは女性が上手だとも。でも、ただ集まってしゃべっているだけでは、話がどうしても片寄るようです。その意味でも、それぞれの思い出を材料にして話をし、それに突っ込むという形は、場を活性化させ、脳を活性化させると思いました。

 「はまぎくカフェ」に参加することはささやかな楽しみよ、と言って下さった方もいました。とても嬉しい言葉です。話すこと、笑い合うこと、そしてちょっと学ぶこと。

 老化を止める研究が進んでいるという話が、テレビのワイドショーで紹介されたことがあります。それでも死を止めることは出来ないようです。「占い師が何でも教えてくれるとしたら」のマスで、死んだらどうなるかが知りたい、という発言がありました。ほんと、どうなるのでしょうね。

 死んだらどこへ行くのか、どうなるのかは分かりませんが、生きている間は元気でいたい、と誰しも思うのではないでしょうか。「はまぎくカフェ」で、少しでも老化を止めることが出来れば、幸いです。笑い合い、おしゃべりして、学び合い、そしてちょっと悩みながら(本当は太陽が泣かない世界であって欲しい、とものすごく悩む人もいるでしょうが)、元気に過ごしていきたい。皆さんは楽しんでくれたようです。第2回バージョンも検討しようという話も出ています。何よりもスタッフが楽しかった。これが恐らく一番大切なことだろうな、と思います。