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第17回 倒れ記念日

 シルバー・リハビリ体操、歌に続いて、いよいよ石井代表の体験講話の始まり始まり。いつも講話者を紹介するのは代表でしたので、今回は自己紹介から始まりました。笠間生まれで、小学3年生の時に、水戸に引っ越し、常盤小学校に通っていたこと。かなりの暴れん坊で、お母上がしょっちゅう謝りに回っておられたこと、など。結婚後、那珂湊に住むようになり、お神輿大好き人間なので嬉しかったこと。この神輿好きが高じて2018年8月8日脳幹梗塞に至ったこと等。また、はまぎくカフェの代表を引き受けた経緯も語られました。そして、リハビリとは病院の中の話ではなく、病院を出てから社会復帰に向けて、自分でどれだけ頑張れるかなのだと考えているということ。その考えをどういうふうに実践しているかが、沢山の映像とともに語られました。

 2018年8月5日は、気温36度3分。水戸常盤神社神輿奉舁会(みこしほうよかい)の磐会(おおいわかい)指揮の下で、八角神輿をお昼過ぎに担ぎ出しました。ビールやカップ酒をかなり飲んでいて、汗がお祓いをする間もぽたぽた垂れていました。熱中症で倒れた人が沢山いて、その介助も手伝っていたそうです。次の8月6日、自転車で水戸へ。8月7日は気温27度の中、7時半くらいから17時半くらいまで、車庫に籠って趣味のエンジンいじり。体調は絶好調で、迎えた8月8日の16時10分頃、突如目の前が暗くなり(視野狭窄)身体が動かなくなりました。眼は見えないのですが耳は聞こえていたそうです。かかりつけ医に電話をしたら、すぐに救急車を呼びなさいとの指示があり、水戸ブレインハートセンターに運び込まれました。

 

 石井さんの場合、40分以内で治療が開始されました。症状が出た時刻が分かっていたことと即対応したことで、症状が出てから4、5時間以内であれば使える強い血栓溶解療法のt-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)を静脈注射し、血栓を溶かして血流を回復できました。

 最近見たドラマで、飛行機の中で心筋梗塞の疑いのある急病人が出て緊急着陸した、というものがありました。このドラマでは国内線でしたので、30分くらいで事態は解決に向かいましたが、これが国際線の場合、緊急着陸までどのくらいかかるんだろう、など考えてしまいました。

 

 さて、右の画像は、石井さんのMRI画像です。脳幹に白い部分がありますが、ここが血管の詰まった場所です。石井さんは脳梗塞の一種である脳幹梗塞を発症しました。脳梗塞で一番多いのが、中大脳動脈梗塞で60%から70%を占めます。ここに梗塞が起こると、大脳前頭葉や頭頂葉の一部や側頭葉の機能に障害が出ます。失語症や失認証(見たり聞いたりする情報が認識できなくなる)、半側空間無視、片麻痺、意識障害などが起こります。  注)青文字はリンク付き)

 脳幹は狭義には中脳・橋・延髄を指しますが、広義ではこれに間脳も含めます。脳の中心部にある脳幹や小脳に梗塞が生じると、自律神経の乱れ、呼吸や意識や手足の運動や感覚の障害などが出ます。嚥下障害や言語障害、身体のバランスの維持が難しくなるなど、生命維持の基本に関わる部分です。

 

 ただ、一度死んだ細胞は生き返らないそうです。血栓はなくなりましたが、完全回復には至らない。その代わり、周りの細胞が補完機能を果たすようです。発音もかなり回復しましたが、「さしすせそ」の発音が難しい。カラオケは言語障害回復のための言語機能訓練の一環です。

 ブレインハートセンターでの治療は8月28日で終了して、その後はひたちなか総合病院での繰り返しリハビリに入りましたが、飽きてしまったようです。1カ月くらいで退院してしまったとか。

 むしろ自宅へ戻ってからの毎日のリハビリ訓練が効果を上げているようです。石井さんは、倍やると効果が上がると思ってリハビリをやり過ぎるようです。肩を壊して、北水会記念病院に半年治療に通い、大変に痛い思いをした話や歩き過ぎはよくないという話は、妙に納得。

 

 補完機能を引き出すのは、やはり「こうなりたい」「これをやりたい」という想いの強さなのでしょう。石井さんは車の運転は出来るようになりましたが、そのために受けた訓練の脳トレが紹介されました。歩きながら話をするというように二つ以上のことを同時にこなすデュアルタスク(二重課題処理)訓練の、より難易度の高いもののようです。高齢者の運転における事故は、このデュアルタスクの処理能力の低下が原因と言われます。前頭前野のワーキングメモリの機能低下が、二重課題処理能力を衰えさせるようです。

 石井さんは、スキーは無理と言われているとのこと。でも、お孫さんと何とかスキーをしたい。石井さんのことだから、想い続けることで、何か方法を見つけるに違いないと思いました。

 

 下の写真はリハビリの様子を撮っているものや手引書、杖、友人が探してくれた自転車こぎの道具などです。

 この絵は会場に飾られた「復活」をテーマにした模写作品です。出席者の皆さんからも、「あれはどんな絵なの」という声が講話の間にも漏れていたようです。

 最後に、山本さんから、この絵を描いた経緯とこの作品の元の絵、アンリ・ルソーの『戦争』が紹介されました(写真参照)。アンリ・ルソー(1844-1910)は、19世紀末から20世紀初頭にフランスで活躍した素朴派の画家です。一見素人っぽい稚拙な印象を与えますが、一つひとつは緻密に描き込まれています。「世界一下手な画家」と評されながら、不思議な魅力で人を引き付ける力を持っています。20年以上、税関吏としての仕事の合間に絵を描いていました。早期退職(1893年)して絵を描くようになった50歳代に、代表作の大部分が描かれています。

 『戦争』は1894年に描かれ、アンデパンダン展に出品。現在は、パリのオルセー美術館所蔵です。この絵は、一見何の希望も無いような色調で描かれ、周りの木々は黒く萎れ、剣と松明を持つ少女と黒い馬の下には、累々と横たわる死体が描かれています。ただ、空は澄み渡る青。そして左側の空は光を感じさせる淡い青になっています。

 アンリ・ルソーがこの絵を描いたのは、戦争の理不尽さを表現したかったから、と言われます。この絵の模写を描いた山本さんは、現在の世界状況にも思いを寄せながら、石井さんの現状を闘いに光が射してくる青(復活)として表現したかったようです。山本さんは観た人が何かを感じてくれればよいと思っている、とのこと。会場から、模写した絵に勢いがある、との評価もありました。

 今回もご参加くださった皆様にお礼を申し上げます。そして、石井代表、お疲れ様でした。これからも頑張りすぎずにリハビリを続けてください。

 

パフェコレとは、パリコレと並ぶ美の祭典(?)

 

・ひたちなかを元気にする取り組みで、地元の高校生が、つくったサツマイモジェラートが、次回の会場である、しおかぜみなとに在りました。会の打ち合わせで食べておいしかったのと、今、京都で流行りのパフェとが、反応して、新作「みなとのソナタ」(山本信子作)が出来ました。

 

・次の2枚は、京都で今人気の高級パフェ。京都パフェコレクションは、2019年に第1回目が開催されました。期間内に、参加店のパフェを食べてスタンプを集めると、オリジナルノベルティがもらえるという企画です。例えばスタンプ2個でステッカー、5個でポーチというように。2020年に第2回目が開かれましたが、2021年はどうだったか。ネットで見ても出てきません。2022年おすすめトップ20とかは出てきますが。