第29回 和太鼓の響き

「遠くに聴こえる

太鼓の音に いつしか 心が 騒ぎだす 

ドーン ドーン

響も 一段 高まれば あなたの心も 太鼓打つ

打つ音 弾めば 踊りだす 

太鼓の音は 心地よい

そして あなたは 若返る」(山本信子作)

 

 今回のキャッチコピーです。暑さボケの心身に、太鼓の響きは気持ち良かったです。

 

 いつものようにシルバー・リハビリ体操から始め、『パフリカ』と『少年時代』を歌いました。井上陽水の『少年時代』は、響のよい言葉の羅列「夏が過ぎ 風アザミ」で始まりますが、「夏まつり 宵かがり」「八月は夢花火 私の心は夏模様」とか、印象的な言葉で紡がれています。

 

 この歌は映画『少年時代』(藤子不二雄Ⓐ原作の映画化)の主題歌として作曲されました。藤子不二雄Ⓐが、飲み仲間だった井上陽水に直接依頼した曲です。中学校・高等学校の音楽の教科書に何度も掲載されています。「夢はつまり 想い出のあとさき」なんて、ちょっと哲学的です。

 

 陽水は、『傘がない』もそうですが、何気ない日常の出来事から思索的空間を展開するシンガーソングライター。その彼も後期高齢者。感慨深いものがあります。

 

 さて、和太鼓グループ「響雅」の最初の演奏は小学生のグループでした。小学一年生が2人いて、一生懸命叩いていたのが、印象に残りました。『龍雅』という曲で、和太鼓グループで最初にやる曲だそうです。前列両端の2人が、小学一年生でした。指導者の先生が2人を紹介してくれましたが、とても初々しかったです。

 

 先生の指導方法も少し変わってきているのかもしれません。中学生たちの大会出場曲は、「楽しむ」ことを重視した曲選びをしたと、先生が言ってらっしゃいました。子どもたちに笑顔が見えたのが印象的でした。真面目な表情が合う曲と笑顔が合う曲と、どちらもいいなぁと思います。

 

 録っていた動画を見直してみると、太鼓を打つ動きの美しさがよく分かります。全身を使って音を創り出している。これは先生の方針もあるのでしょうが、そもそも和太鼓が組太鼓(複式複打法)として祭りの伴奏から離れ、独自の音楽性を形成している流れの中にあるのでしょう。

 

 創作和太鼓というのは、和太鼓を主体とする音楽形式のことです。複式複打法と言われる複数の形の異なった太鼓を組み合わせて演奏する形態(組太鼓)が主流のようです。

 このやり方は、お諏訪太鼓の宗家小口大八さんが、1950年代に考案しました。太鼓の胴の長さや直径等の違いで音が違ってくることを利用し、これを組み合わせることによって、脇役ではなく、太鼓が主体の音楽を創り出しました。

 

 後ろ向きで打っているのが、長胴太鼓(宮太鼓)で最もポピュラーな太鼓です。その前の真ん中の列と一番前が桶胴太鼓です。長胴太鼓と桶胴太鼓の鼓面直径3尺(約90cm)以上の太鼓を大太鼓と呼ぶようです。『無法松の一生』の「小倉祇園太鼓」の場面で打たれていたものは、大太鼓ですね。あの「暴れ打ち」は本来の祇園太鼓の打ち方ではないそうですが、かっこいいです。

 

 鼓は手で打ちますが、和太鼓は基本撥で打ちます。前列は桶胴太鼓を横置きして打っています。打つ姿勢の美しさにも魅せられます。その後ろが、締太鼓です。締太鼓は音が長胴太鼓よりも高く、遠くまで飛ぶ、「冴えた音色と歯切れのよい高音が求められる」難しい楽器のようです。

 

 最後に聴衆の私たちも打たせてもらいましたが、私が打ったのはこの締太鼓でした。撥がバンバン弾んで、結構気持ち良かったですが、腕の力を要求されるなぁと実感しました。

 

 

 途中で保育園の年長さんたちが、お兄さんお姉さんたちの演奏を聴きに登場。きちんと座って聴いていたので驚かされました。子どもたちも太鼓を打ち始めているようですが、「響雅」の練習時間にはみんな退園していて、なかなか演奏を聴く機会はないそうです。将来の「響雅」のメンバー候補生たちが参加してくれて、微笑ましかったです。

 

 今回も、暑い中、参加して下さった皆様に感謝です。そして、なんといっても素敵な演奏を聴かせてくれた和太鼓集団「響雅」の皆様、ありがとうございました。大会、頑張ってくださいね。解説・司会をして下さった桜井先生、ありがとうございました。ホールや機器を貸して下さり、いろいろご支援くださった堀川保育園の皆様にも、心からお礼申し上げます。