第34回 お得感満載のコンサート

 今年は辰年です。龍のしんにょうすごく素適ですが、見ながら、ウーン、その意図や如何、と思いました。休憩の後に説明があり、とても納得。それはまた、後ほど。

 

 今年で4回目の、山本彩子さん(独唱)と忠和子さん(伴奏)のミニコンサート。今回は、62名の方が参加してくれました。出演者とスタッフまで入れると、70名。コロナが5類に移行後の開催だったこともありますが、お二人のミニコンサートの魅力です。

 石井代表からの紹介の後、舞台に上られた彩子さんが最初に歌ったのが、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759)作曲の「わたしを泣かせてください」でした。歌の背景を聞かないと、何の歌なのか分からないですよね。これは、恋人への忠誠心を歌ったアリアです。

 

 時は11世紀、場所はエルサレム。第1回十字軍が勝利を目前にしています。勇者リナルドと相思相愛のアルミレーナ(十字軍の指導者ゴッフレードの娘)が、サラセン人の魔法使いに連れさられます。サラセン人の王がアルミレーナに恋心を抱き求愛しますが、彼女はそれを拒んで歌います。「どうか泣くのをお許しください。この過酷な運命に‥‥」

 

 ヘンデルのオペラ『リナルド』(1711年)の第2幕で歌われるアリアです。アリアというのは抒情的な独唱曲のことです。『リナルド』は第1回十字軍がエルサレムをイスラム教徒から奪還する話で、7回派遣された十字軍で、唯一成功した遠征でした。

 次にモーツァルトの『フィガロの結婚』から「恋とはどんなものかしら」、ラフマニノフの「夢」が歌われました。ラフマニノフの手の大きさの話が出て、とても印象に残っています。そして「マリーゴールド」。これはウクライナの民謡です。お母さんを思う歌で、心に沁みてきました。会場もしんみりしました。

 この後の3曲は、ガラッと雰囲気が変わって、『サウンドオブミュージック』の世界に。これは、第2部の歌唱指導の時に、みんなで歌いました。「サウンドオブミュージック」、「エーデルワイス」、「わたしのお気に入り」。どの歌も、歌われている場面が目に浮かんできます。

 

 雄大なアルプス山脈を背景に飛び跳ねながら、行進しながら歌っている場面、雷を怖がってマリアの部屋に集まった子どもたちが「わたしのお気に入り」を歌っている場面、トラップ大佐が歌の美しさを思い出す場面(「サウンドオブミュージック」)と。そして、ナチスへ出頭することを拒んで、合唱祭を利用して、家族で徒歩でアルプスを越える場面など。長女リーガルの恋人ロルフは、ナチスの親衛隊に入隊してしまいますが、家族が逃亡するのを見逃しました。どんどん、いろんな場面を思い出します。

 休憩を挟んで、シルバーリハビリ体操をして軽く身体をほぐし、先ほどの龍の制作品の説明がありました。3つの意味を込めて制作されています。1つ目は皆さん沢山来てくださってありがとうございますの「歓迎」の意味です。2つ目はニューイヤーコンサートなので、新しい年を迎える意味。3つ目は「老い」を迎え撃つ意味での迎。老いは闘いであり、エネルギーがいります。休みつつ、折り合いをつけつつ、お得感のある作品に出合って、死ぬまで頑張るぞ、と思っていただけるとありがたいとのこと。会場からは、そうそう、と笑いながら拍手がありました。

 第2部は、彩子さんの歌唱指導。まず体をほぐす首回し、エアーラダー上りで、「えい、や」と右手左手を交互に上に延ばしました。

 

 お得感のあるコンサートをやりたいというのが、彩子さんの思いでしたが、十分すぎるくらいお得感満載。第2部では、彩子さんが舞台から降りて、「雨降りお月」、「シャボン玉飛ばそう」、「この道」、「エーデルワイス」、「私のお気に入り」、「サウンドオブミュージック」を母音法やリズム読みの指導も入れながら、一緒に歌ってくれました。

 

 マスクをしていても、マスクの下で口の端をきゅっと上げると声が前に飛ぶという指導もありました。なるほどです。マスクをして話していると、どうしても声が籠りがちになります。マスクの下で、ニコッとして声を出すんですね。

 

 最後に、ベートーヴェンの第九の有名な部分「喜びの歌」をみんなで歌って終了。私たちがよく知っている「晴れたる青空‥‥」で始まるこの歌は、第4楽章の合唱部分「歓喜の歌」のバリトンの独唱部分に、岩佐東一郎さんが作詞したものです。とても気持ちよく歌って終わりました。楽しかったです。

 

 今回も参加して下さり、一緒に盛り上げて下さった皆さん、ありがとうございました。

 山本彩子さん、鍛錬された素晴らしい歌声と楽しくお得感満載のお話、本当にありがとうございました。

 忠和子さんにも息の合った伴奏を楽しませて頂きました。本当にありがとうございました。